何度か会費を案内しても納入を確認できず、「班長としてどこまで対応すればよいのだろう」と困ることもありますよね。ただ、記録の行き違いや支払いにくい事情がある場合もあり、最初から支払い拒否とは判断できません。
この記事では、現役町内会長のヒラリが、町内会費・自治会費の納入記録や加入状況の確認から、個別連絡、文書での再案内までを説明します。担当者と会員双方の負担に配慮し、班長だけで抱えず、役員で対応する進め方を整理しましょう。
町内会費・自治会費を払わない会員へ対応するときのポイント

未納への対応は、記録を確かめ、個別に状況を尋ねることから始めましょう。請求内容や会員の事情を整理し、班長一人で判断せず、会長・会計担当者などと方針を共有して進めます。まずは、次の4つを押さえておきましょう。
- 納入記録・加入状況・会費の決まりを確認する
- 個別に事情を尋ね、必要に応じて文書で再案内する
- 未納情報を広めず、威圧的な取り立てを避ける
- 班長だけで抱えず、役員で方針を決めて相談する
会費を請求する前に確認しておきたいこと
会費の納入を確認できないときは、会員へ連絡する前に、団体側の記録と請求内容を整理しましょう。誰に、何の費用を、どの期間分として請求するのかを、加入状況や規約などと照らし合わせて確かめます。
集金簿・通帳・領収書で、支払い済みの行き違いを確認する
まずは班長と会計担当者で、納入記録の照合を行いましょう。集金簿だけでは未納に見えても、入金確認が済んでいなかったり、受け取った記録が会計担当者へ届いていなかったりする可能性があります。
| 確認する記録 | 見るところ |
|---|---|
| 集金簿・会員別の記録 | 対象年度・期間、金額、受取日、受取担当者 |
| 通帳・入金明細 | 入金日、振込名義、金額 |
| 領収書の控え | 発行日、宛名、対象期間の記載 |
| 前任者からの引き継ぎ資料 | 支払い済みの報告や、確認途中の事項 |
東松島市の会計ハンドブックでも、二重集金や漏れを防ぐため、受け取った日付・名前・金額を記録することが紹介されています。(参考:東松島市「地区自治会ハンドブック【会計編】」本文8ページ)
振込名義が届け出ている会員名と異なる場合もあるため、名前だけで判断せず、金額や入金日も確認します。会員に領収書などの提示を求める前に、団体側で支払い済みの行き違いがないかを確かめてください。
加入状況と、未納になっている期間を確認する
記録に未納額が残っている場合も、現在の名簿だけで請求を進めず、加入状況と対象期間を確認しましょう。加入中の会費なのか、未加入・退会後の期間を含んでいないかを整理します。
| 状況 | 先に確認すること |
|---|---|
| 加入中 | 会員だった期間と、納入を確認できない期間・金額 |
| 未加入・加入状況が不明 | 加入の申し込みや、これまでの案内・やり取りの記録 |
| 退会済み・退会の申し出がある | 申し出の内容と日付、請求対象の期間 |
特に退会の申し出があった場合は、誰がいつ受けたのか、前任者の記録も確認してください。会費を払っていない、連絡が取れないということだけで、退会や支払い拒否と扱わないようにします。
最高裁平成17年4月26日判決では、その事例における退会前の自治会費の支払いは認められ、退会後の自治会費は支払い義務を負わないと判断されています。「退会すれば過去の未納も消える」「未納がある限り退会できない」とは一律に考えず、期間を分けて確認しましょう。(参考:裁判所「最高裁判所第三小法廷 平成17年4月26日判決」)
住民側から見た、加入中の未払いと支払いの考え方は、こちらの記事で詳しく整理しています。

会費額・納期限・減免などの決まりを確認する
請求する金額や支払時期は、前年の集金簿だけでなく、規約・会費規程・総会資料などにある会費の決定内容と照らし合わせます。規約に具体的な金額が載っていない場合は、別の規程や決定資料も確認しましょう。
案内する前に決まりを確認
- 会費額と対象期間
- 納期限と支払い方法
- 会員・世帯による区分
- 減免や分割などの規定と、判断する担当・機関
東松島市の会計ハンドブックでは、明確なルールによらない集金や免除は不公平感につながるため、あらかじめルールを決めて守ることが紹介されています。(参考:東松島市「地区自治会ハンドブック【会計編】」本文8ページ)
支払いについて相談を受けたときに備え、減免などの基準と、誰が判断するかも確かめておきます。決まりがない場合は班長がその場で免除・分割・追加料金を決めず、会長や会計担当者などへ持ち帰って対応を検討しましょう。
町内会費・自治会費の未納には段階を踏んで対応する
記録と請求内容を確認したら、まずは個別に連絡し、状況を尋ねます。そのうえで事情に応じた対応を検討し、必要なら文書で再案内しましょう。訪問回数や連絡の間隔を一律に決めず、相手の回答や団体の対応方針に沿って進めます。
最初は個別に納入状況と事情を尋ねる
最初の連絡では、「払っていません」と責めるのではなく、団体の記録では納入を確認できていないことを伝え、個別の状況確認から始めましょう。不在が続いていることだけで、支払いを拒んでいるとは判断しません。
令和○年度の会費について確認させてください。○月○日現在、こちらの記録では○月分から○月分までの納入を確認できていません。すでにお支払いでしたら、行き違いで申し訳ありません。お支払いの日付や方法を教えていただけますか。まだの場合は、お支払い方法や受け渡しについて相談させてください。
このように行き違いへの配慮を添え、まず相手の話を聞きます。本人が話していない経済状況や家庭事情を推測せず、連絡しやすい方法や受け渡しの都合など、対応に必要な範囲を確認してください。
初回の納入確認を文書で行う場合や、不在時にメモを残す場合は、こちらの記事の文例を利用できます。

支払いにくい事情や、会費への疑問に応じて対応する
会費を納入できていない理由が分かったら、事情に応じた対応を検討します。集金日時が合わない場合と、使い道に疑問がある場合では、必要な説明や相談が異なります。
| 確認できた状況 | 検討する対応 |
|---|---|
| 集金日時が合わない | 利用できる支払い方法や受取日時を相談する |
| 金額や使い道に疑問がある | 規約・予算・決算などの資料で説明する |
| 一括での支払いが難しい | 団体の決まりと権限に沿って、分割などを検討する |
| 経済的な負担が大きい | 減免制度の有無と、判断の手続きを確認する |
| 加入自体を続けたくない | 退会の意思と対象期間を整理し、会費の未納とは分けて確認する |
※表は、羽島市の手引きにある未納理由別の対応を参考に、本記事の実務提案として整理したものです。(参考:羽島市「自治会 運営の手引き」冊子21ページ)
新しい支払い方法や減免を検討する場合は、前章で確認した判断の基準と権限に沿って進めます。担当者がその場で約束せず、必要な判断を会長や役員会などへ引き継ぎましょう。
相談のために病歴や収入などを必要以上に聞き出したり、会費の代わりに活動へ参加することを一律に求めたりしないようにします。また、説明すれば必ず納得してもらえるとは限らないため、残った疑問や意見も記録しておきます。
支払い方法そのものを見直す場合は、こちらの記事で現金・銀行振込・口座振替・キャッシュレスの特徴を比較できます。

連絡後も納入を確認できない場合は、文書で再案内する
個別に連絡した後も納入を確認できない場合は、最新の入金記録と前回のやり取りを確かめ、文書で再案内します。対象期間・金額・期限を明記し、何について対応をお願いしているのかが伝わる内容にしましょう。
次の文例は、町内会・自治会から会員へ個別に渡す再案内です。団体名や日付、金額、支払い方法などを、実際の決定内容に合わせて差し替えてください。
令和○年○月○日
○○様
○○町内会
会長 ○○ ○○
会費の納入についての再案内
日頃より町内会活動にご理解とご協力をいただき、ありがとうございます。
○月○日にご案内した下記の会費について、○月○日現在、当会の記録では納入を確認できていないため、改めてご連絡いたします。
対象期間:令和○年○月分~令和○年○月分
納入を確認できていない金額:○○円
納入期限:令和○年○月○日
支払い方法:○○
受付場所・振込先など:○○
まだお支払いでない場合は、上記の期限までに納入をお願いいたします。期限までのお支払いが難しい場合や、金額・対象期間にご不明な点がある場合は、下記の担当者へご連絡ください。
すでにお支払いいただいている場合は、行き違いをご容赦ください。お手数ですが、記録を確認するため、お支払いの日付や方法を担当者へお知らせいただけますと幸いです。
担当者:○○ ○○
連絡先:○○○-○○○○-○○○○
連絡可能な時間:○時~○時
文例はコピーしやすいよう左揃えで掲載しています。Wordなどで紙のお知らせに整える場合は、次の配置を参考にしてください。
| 部分 | Wordでの配置例 |
|---|---|
| 発行日「令和○年○月○日」 | 右揃え |
| 宛先「○○様」 | 左揃え |
| 発行者「○○町内会」「会長 ○○ ○○」 | 右揃え |
| 件名「会費の納入についての再案内」 | 中央揃え |
| 挨拶・本文・対象期間・金額・期限・支払い方法・連絡先 | 左揃え |
配置は一例です。すべて左揃えでも構いません。位置を変えるときは空白を並べず、Wordの「右揃え」「中央揃え」の機能を使いましょう。文例ボックスの見出し「町内会費・自治会費の納入に関する再案内」は記事内の案内用なので、紙には件名だけを載せれば十分です。
支払い方法は、団体で利用できるものを具体的に記載します。前回の連絡で支払日などを相談済みの場合は、その内容と食い違わないようにしてください。再案内にも支払いと相談の窓口を添え、文書の控えと送付日を残しておきましょう。
この再案内は、裁判所が出す「支払督促」とは別のものです。根拠のない罰則や、実施を決めていない法的対応の予告は加えず、宛名や個別の金額を含む文書は回覧ではなく、本人へ個別に渡します。
未納への対応で避けたい進め方
会費の納入をお願いする場合も、会員のプライバシーや担当者の負担に配慮が必要です。支払いを迫るために情報を広めたり、班長個人に未納分を負担させたりせず、団体として記録と決まりに沿って対応しましょう。
| 避けたい進め方 | 代わりの対応 |
|---|---|
| 未納者の氏名・金額を回覧や全体LINEへ載せる | 本人へ個別に連絡し、情報共有は対応に必要な担当者間にとどめる |
| 不在を拒否と決めつけ、訪問や電話を重ねる | 連絡方法と次の確認時期を役員で整理する |
| 班長に未納分を自費で穴埋めさせる | 未納として記録し、会計・会長へ引き継ぐ |
| その場で罰金や遅延金を追加する | 根拠や有効性を確認し、必要なら専門家へ相談する |
| 支払いを迫るため、即座にごみ出し禁止や除名を告げる | 会費の請求と、施設利用・会員資格の問題を分けて確認する |
個人情報保護委員会の資料では、自治会などが個人情報を扱う際の利用目的や安全管理について説明されています。本記事では、その考え方を踏まえ、未納情報も対応に必要な範囲で扱う運用を提案します。資料が会費未納者の公表を直接解説しているという意味ではありません。(参考:個人情報保護委員会「自治会・同窓会等向け 会員名簿を作るときの注意事項」)
また、班長が集金を担当していることと、会員の未納分を自費で負担することは別です。集金できたように見せるための穴埋めはせず、残額と対応経過を記録して、役員へ引き継ぎましょう。
ごみ集積所については、地域や管理形態によって利用条件が異なります。未納への制裁として利用を止めるのではなく、会費の請求と利用ルールを分け、必要なら市区町村のごみ担当窓口へ確認してください。行事への参加、備品の貸し出し、会員資格なども、それぞれの条件や手続きを確認し、すべてを同じ扱いにしないようにします。
班長だけで抱えず、役員で対応方針を決める
会費の未納が続く場合は、班長一人に連絡や判断を任せず、会長・会計担当者などと対応を分担しましょう。減免や長期未納への対応は、規約などに沿って団体として検討し、必要な場合は外部へ相談します。
対応の記録と担当窓口を引き継ぐ
班長が会員から相談を受けたら、確認した内容を会長や会計担当者へ伝え、対応方針の共有を進めましょう。誰が次の連絡をするのかまで決めておくと、複数の役員が同じ請求や質問を繰り返すことを防げます。
| 担当 | 役割の例 |
|---|---|
| 班長・組長 | 決めた範囲での連絡、受取状況の報告 |
| 会計担当者 | 金額・期間・入金記録の照合 |
| 会長・役員会など | 対応方針、例外対応、外部相談の検討 |
※役割分担は本記事の提案です。全国共通の決まりではないため、自分たちの規約や体制に合わせて調整してください。
羽島市の手引きでは、未納への対応を集金担当者だけでなく執行部全体で行うことが示されています。また、東松島市の会計ハンドブックでは、会費の質問窓口を会長・会計担当者などへ一本化する考え方が紹介されています。(参考:羽島市「自治会 運営の手引き」冊子21ページ、東松島市「地区自治会ハンドブック【会計編】」本文8ページ)
担当者の交代時には、必要な記録の引き継ぎも行います。内容は次のように整理し、対応する担当者が確認できるように管理しましょう。
| 引き継ぐ項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 対象期間・残額 | 何年度・何月分が、いくら残っているか |
| 連絡日・回答の要旨 | いつ連絡し、本人からどのような回答があったか |
| 次の対応・担当者 | 次に何を、誰が行うか |
記録には確認できた事実を残し、「悪質」「払う気がない」といった評価や、対応に不要な家庭事情は書き加えません。相談中の内容と、団体として決定した内容も区別しておきます。
私の町内会では、各班の班長さんが会費を現金で集めています。各家庭を回るため、留守宅への対応や、集めた現金の管理といった作業も生じます。こうした日々の集金にも負担があるため、難しい判断まで班長さんだけに任せない体制が必要だと考えています。
解決しない場合は、資料をそろえて専門家へ相談する
請求そのものに異議がある場合や、長期間の未納について判断に迷う場合は、根拠資料と対応記録をそろえて相談しましょう。「払ってもらえない」という説明だけでなく、何に意見の違いがあるかを整理すると、相談したい内容が伝わりやすくなります。
相談前にそろえる資料
- 規約・会費規程・関連する決定資料
- 加入や退会の申し出に関する記録
- 対象期間ごとの請求額と納入記録
- 送付した案内と、連絡・回答の記録
- 団体として希望する対応と、確認したい点をまとめたメモ
運営上の相談は市区町村の町内会・自治会担当窓口、請求の可否などの法的判断は弁護士など、裁判手続の案内は裁判所と、内容に応じて確認先を分けます。自治体の担当窓口が、会費の徴収や当事者間の仲裁を代行するとは限りません。
金銭の請求には、裁判所の「支払督促」などの手続もあります。ただし、支払督促に相手方が異議を申し立てると、訴訟手続へ移行します。手続をすれば必ず回収できるわけではなく、費用や対応の負担も含めて検討が必要です。(参考:裁判所「支払督促」)
請求できる期間や時効、遅延金の扱い、どの手続が適しているかは、個別の事情によって確認が必要です。古い資料の説明だけで判断せず、専門家への相談を通じて、団体として次に取る対応を検討しましょう。
この記事のまとめ
町内会費・自治会費の納入を確認できないときは、最初から支払い拒否と判断せず、集金簿・通帳・領収書などを照合しましょう。加入状況と請求対象の期間、会費額や納期限の決まりも確認してから、個別に連絡します。
支払いにくい事情や会費への疑問がある場合は、団体の基準に沿って対応を検討します。必要に応じて文書で再案内し、未納情報を広めたり、担当者に自費での穴埋めを求めたりしないようにしましょう。
班長だけで抱えず、会長・会計担当者などと記録や方針を共有し、判断が難しい場合は資料をそろえて相談してください。まずは会計担当者と、対象期間・金額・納入記録を照合するところから始めてみましょう。
